fMRI解析の基礎 (4):GLMの理論

最終更新日: 2020年5月26日

1. 相関法

予測BOLDと測定BOLDとの相関が高いボクセルを特定します。具体的には、刺激による神経活動のボックスカーにhrfを畳み込んで予測BOLDを計算し、測定BOLDを目的変数として回帰します。

回帰係数β\betaが相関を表し、タスクに感度の高いボクセルはβ\betaが高くなると推定できます。

y(TRi)=βx(TRi)+B0+ε(TRi)y(\mathrm{TR}_i)=\beta \cdot x(\mathrm{TR}_i)+B_{0}+\varepsilon(\mathrm{TR}_i)

ただし、B0B_0は基準BOLD、ε(TRi)\varepsilon (\mathrm{TR}_i)は、平均 00 分散 σe2\sigma_e^2 のガウシアンノイズです。

これを全TRにかけて行列で表示しましょう。

y=Xβ+εy=X\beta+\varepsilon

この式は、 一般化線形モデル(GLM)と呼ばれます。XXは実験設計を反映するため、設計行列 (Design Matrix) と呼ばれます。

刺激による神経活動が複数ある場合は、xxを複数用意し線形結合することで説明できます。

2. 共線性 (Collinearity)

回帰問題では、説明変数同士の相関が共線性として問題となります。fMRIのGLMでは、神経活動の共線性が問題となります。

以下の2つを組み合わせると共線性を効果的に弱めることができます。

  1. Jittering刺激呈示を非周期的にします(間隔をランダムにします)
  2. Partial trials design:いくつかの試行で、一部の刺激を数十%除外します

Jittering は、被験者の周期的な生理作用のノイズによる共線性も防げます。


3. Nuisance 効果

前処理後も、タスクに関係ない変数による効果がいくつかデータに残ってしまっています。

これを Nuisance 効果として回帰モデルに取り込みます。代表的な変数は以下です。

  • スキャナドリフトによる低周波ノイズ Δ\Delta
  • 心拍によるノイズ ΔH\Delta_H
  • 呼吸によるノイズ ΔR\Delta_R
y(TRi)=βx(TRi)+ΔHxH(TRi)          +ΔRxR(TRi)+Δi+B0+ε(TRi)y(\mathrm{TR}_i)=\beta \cdot x(\mathrm{TR}_i)+ \Delta_H x_{H}(\mathrm{TR}_i) \\           + \Delta_R x_{R}(\mathrm{TR}_i) + \Delta \cdot i + B_{0}+\varepsilon(\mathrm{TR}_i)

これらもまとめて設計行列XXと回帰係数β\betaに取り込むことができます。

4. FBR 法

Rapid Event-Related Design では、複数回の刺激による神経活動が重なることとなります。重ね合わせの原理から、各刺激に対するBOLDを複数のβ\betaとガンマ関数の畳み込みで表現し、各時点におけるBOLDをβ\betaの和で表現できます。それぞれのβ\betaを連立方程式によって同定することでtaskに対する効果を検出できます。連立方程式の解を求めるために、「Jittering」は不可欠です。

y(TR1)=β1  y(TR2)=β2  y(TR3)=β1+β3 y(TR4)=β1+β2+β4y(\mathrm{TR}_1) = \beta_1   \\ y(\mathrm{TR}_2) = \beta_2   \\ y(\mathrm{TR}_3) = \beta_1 + \beta_3  \\ y(\mathrm{TR}_4) = \beta_1 + \beta_2 + \beta_4 \\ \vdots

5. Macrolinearity と Microlinearity

FBR法はイベントの重ね合わせを予測し、相関法は個々の神経活動を予測します。ここで2つの仮定があります。

  • Macrolinearity: イベントに対する重ね合わせ
  • Microlinearity: 神経活動に対する重ね合わせ

FBR法は Macrolinearity を前提とします。相関法は Macrolinearity, Microlinearity のどちらも前提としますが、刺激のタイミングを完全にランダム化できます。


Reference

  • Ashby, F. G. (2019). Statistical analysis of fMRI data. MIT press. url
  • fMRI in Neuroscience: Modeling the HRF With FIR Basis Functions. url