sn42
R&D Job in Japan.
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0. はじめに
1. BOLD反応
2. 実験デザイン
3. 前処理
4. GLMの理論
5. GLMと検定
6. 多重比較問題
7. 集団解析
8. 接続性解析
9. コヒーレンス解析
10. 主成分分析
11. 独立成分分析
12. デコーディング
13. エンコーディング
14. 動的因果モデリング
15. 表現類似性分析
より効果的にタスクに関連する分析ををするために前処理(Preprocessing)を行います。
具体的には、予測しうる誤差を補正することで、統計的な検定力を上昇させます。
fMRIでは、ある方向に切断した2次元平面(スライス)を何枚も取得して3次元の脳を測定します。1TRの間に全スライスを取得しますが、取得順による時間差が生じます。
「Interleaved 取得法」では、最初に偶数番目を取得し、次に逆順で奇数番目を取得することで時間差を減らします。「マルチバンド法」では、同時に複数のスライスを取得することでTRを短くし時間差を減らします。
時間差を埋めるために、 となる関数で補間します。つまり、全ボクセル値をTRの開始時刻に合わせるようにします。
以下のような補間方法があります。
スプライン補間:区分的な多項式で補間します。精度は高いです。
Sinc 補間:sinc関数で補間します。HRFの遅さによってタスクに対するBOLD反応は周波数幅が制限されるため、サイン波の線形結合で記述できます。そのため、Sinc補間で欠損値を完全に補間できます1。SPMでは、sinc関数の冗長な部分を除くためにハンの窓関数をかけて計算をします。
もし前処理で補正できなかった場合、分析時にhrf関数を上手に選択して信号のブレを減らす必要があります。
fMRI内では、頭部が完全に固定されているわけではないので、微小な頭部の動きが発生します。しかし、微小な動きでも大きな影響があります(Huttel et al. (2004), 5 mmの動きで信号が5倍になる)。この処理は、Realignment とも呼ばれます。
固定された空間座標に脳を再配置することで、微小な動きによるボクセルのずれは補正できます。
Rigid-body Registration: 頭が動いても脳の形状は変化しないという仮定の下で、脳を剛体として扱うことができます。(タスクに関係なくほとんど変化しない)BOLD反応の変化を最小限にするように、同じ空間に配置します。6つの自由度があり、座標変換は下の式で行います。
BOLD反応の汚染は連結性など相関を用いる分析では大きく影響します。以下にBOLD反応の補正方法を挙げます。
しかし、BOLD反応の汚染は補正するのが難しいため予防も重要です。
動き補正とスライスタイミング補正のどちらを先にやるかの問題があります。
→ 通常は、スライスタイミング補正から。BOLD反応が不連続な場合はタイミング補正に影響があります。
構造画像と機能画像を重ね合わせることで、機能画像の空間的な正確性を改善します。
構造画像と機能画像は、「解像度・撮像パラメータ」が異なります。ヒストグラムをそれぞれ作成し、ビンの相関が高くなるように重ね合わせます。相関の指標には、非線形な相関でも使える「相互情報量」を用いることが多いです。
個々の脳や脳領域の形状は大きく異なります。そのため、撮像した構造画像を標準脳(アトラス)に合わせる必要があります。以下の2つの標準脳が主に使われています。
標準脳への変換は非線形変換が必要となります。被験者・スキャナー共に標準脳と異なるので、それらの重ね合わせは複雑になります。以下のような手順があります。
アフィン変換:アフィン行列を用いた線形変換。相互情報量を最小化するように決めることができます。位置・向き・サイズがほぼ合わせられます。
局所的な縮小・拡大:局所的に形状を変換します。不均一な変換によりボクセルの中心位置が変わるので、ボクセルを再定義し、値を補間する必要があります。DARTELやFNIRTなど、様々な種類の非線形変換アルゴリズムが提案されています。
各ボクセル値を、距離に応じて重みづけした隣接ボクセルの加重平均で置き換えます。以下のような利点があります。
重みの計算には、スムージングカーネルを用います。重みの総和を1にすることで、平均BOLDを変化させないようにします。
スムージングカーネルにガウスカーネルを用いるときは、以下のようになります。はカーネルのピークの半値における幅となり、スムージング量を決めます。
SN比を最大化するフィルタ(整合フィルタ)は信号と同じ幅となるので、カーネル幅(FWHM)を適切に選択することが重要となります。
一般的には、1~3つのボクセル幅が良いとされます。カーネル幅によっては、信号が弱まったり、信号の重ね合わせが起こったりしてしまいます。
近い時点のボクセル値を平滑化することで、低周波ノイズを軽減します。スキャナドリフトが原因なことが多いです。
高周波ノイズは、サンプリング定理により勝手に除外されます。目的のBOLD反応以下を除外するためには、0.0083Hz以下を除外するとよいとされます。ブロックデザインでは、BOLD反応の周波数が落ちるので、0.0021Hz以下を除外するとよいとされます。
ローパスフィルタやGLMでフィルタリングする場合もあります。
Quality Assurance (QA):データの品質を保証します。球体などのファントムをスキャンして、スキャナーの品質を測定します。
Distortion Correction:不均一な磁場は shimming coil によってある程度補正されますが、スキャナドリフトや脳内の空洞によって歪められます。これを補正するために Field map を撮像しておきます。Field map の歪み補正を構造画像・機能画像にかけることで補正を行うことができます。
Grand Mean Scaling:各 run の平均BOLDを揃えます。現状の平均で割って定数(100か10,000)を掛けます。