fMRI解析の基礎 (2):実験デザイン

最終更新日: 2020年5月25日

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Point

fMRIのポテンシャルを最大限に活かすために、刺激の呈示を適切に設計し神経活動を推定しやすくします

1. 刺激イベントの設計

以下のような設計方法があります。

  1. Block Design

    • 数秒から数分にかけて同じ認知状態にさせます。
    • 古典的な分析では、刺激ブロック(Task)と非刺激ブロック(Rest)の対比を調査するため、BOLD反応が飽和するくらい長いブロックとすることが重要となります。刺激ブロック内では、刺激を与え続けます。
    • 20秒程度で良いですが、検定力を上げるなら40,50秒が良いです(長すぎるとドリフトが影響します)。
  2. Slow Event-Related Design

    • 1つの刺激に対するTrialを複数回繰り返します。
    • Trial間は30秒間ほどRestをとり、ベースラインに戻します。
    • 長時間になるため、コストが高く、被験者の集中力も落ちやすいという欠点があります。
  3. Rapid Event-Related Design

    • Trial間にRestをあまり取らずに連続で呈示します。
    • 連続する神経活動が時間的に重なります。
    • 重なりを除外することで統計的な分析ができます。
  4. Free-Behavior Design

    • 映画など自然な状態に近い連続した刺激を与え続けます。
    • 複数被験者間での相関(ISC)を検定することが多いです。
    • 刺激の状態(映画の場面など)に依る平均神経活動の変化を分析したりもします。
  5. Resting-State

    • 刺激を与えず、スキャナ内で安静にしてもらいます。
    • 複数の共通したネットワークが見られます。中でも Default Mode Network は注意を要する時には消えます。
    • seed-based Analysis と ICA が主に用いられます。

2. 実験条件の設計

実験条件は、以下の分析方法に合わせて設計します。

  1. Subtraction

    • 心理実験で平均反応時間を引き算するように、2つのタスクの平均活動を引き算します
    • 純粋な内挿は成立しにくいですが、比較するタスク処理の類似度は高いため、その効果のみを除外できます。
  2. Conjunction Analysis

    • 全てのタスクに共通する nuisance 効果(目的外の効果)を引き算します
    • 集団解析では、帰無仮説検定のt値を利用して nuisance 効果を除外します。
  3. Factor Method

    • 選択効果を仮定した因子分析をします。
    • 因子が独立である必要があります。
  4. Parametric Design

    • BOLD反応と効果量に線形な相関関係があるとは限らないです。
    • 行動データによる実験パラメータを独立変数とし、モデル化することでタスクに応答する脳領域が特定できます。
  5. Reptition Suppression Designs

    • 刺激の繰り返しによる抑制効果(慣れ)はロバストに見られます。
    • この効果を利用して、抑制される領域=タスクに応答する領域と推定します。

Reference

  • Ashby, F. G. (2019). Statistical analysis of fMRI data. MIT press. url