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今回は『Decoding the Information Structure Underlying the Neural Representation of Concepts』という論文を紹介します!
論文: bioRxiv Link
この論文はプレプリントであり、ピアレビューによる保証はありません (2021/04/30)
概念的知識 (Conceptual Knowledge) が脳内で「どのように表現されているか?」については未だ不明な点が多いです。概念的知識の表現方法に関する既存の説明は、次の3つに分類されます。
これら3つの表現方法の役割・寄与度は、熱心に議論されています。全ての方法に多くの証拠と解釈が存在し、互いの表現に関連性もあるため、別々に取り扱うのは少々難しいです。
この研究では、多数の概念の類似性構造を定量的に推定し、fMRIで測定した脳活動パターンを用いた表現類似性分析 (Representational Similarity Analysis, RSA) を行っています。これにより、3つの表現方法に依存する類似性構造の定量的な直接比較を可能としました。
実験では複数の名詞を1つずつ見せ、その親和度を3段階(ほぼ見ない~しばしば見る)で評価してもらいました。その時の脳活動をfMRIで測定し、以下の関心領域 (ROI) ごとにRSA、偏相関RSAを行いました。
概念の表現方法ごとに、以下のような6つの情報モデルを作成しました。
各情報モデルの RDM (Representational Dissimilarity Matrix) は図2Aのようになり、各 ROI においてRSAを行いました。
semantic network ROI における結果は図2Bであり、Exp48が他よりも大幅に優れていることが分かります。図2Cのようにペアワイズ偏相関RSAを行うと、Exp48以外の情報モデルの説明力は、Exp48の構造と相関する範囲に制限されていることが示されました。
また、図2B右のようにExp48を除いて偏相関RSAを行うと、SM8が優れていることが分かります。
まとめると、経験的情報が概念的知識の神経表現の基礎となっていて、分類学的・分布的表現は経験的情報以外でほぼ寄与しないことが示唆されます。
Study 1 とは概念セット、人数を変えた実験を行いました。大きな特徴は、概念セットがオブジェクト関連4つ、イベント関連4つになっていることです ( 図3Aの Categorical を参照 )。各情報モデルのRDMは図3Aのようになり、各 ROI においてRSAを行いました。
結果として、Study 1 と同様に経験的情報が概念的知識の神経表現の基礎となっていることが示唆されました。また、オブジェクトとイベントを個別に分析すると、イベントの方が神経表現の類似性構造に大きな変化があり、より顕著なカテゴリ構造があると示唆されます。
結果として、概念の神経表現において経験的情報が基礎的な役割を果たしていることが示されました。分類学的モデルの説明力がExp48にほぼ含まれていたことから、分類学的情報は、経験的情報との相互依存性によってのみ表現されている可能性があります。
経験的情報モデルの表現空間が比較的粗いことは1つの制限です。しかし、それでいてExp48の様に説明力の高いモデルとなったのは目を見張る点です。
経験的情報の優位性は、長い歴史のあるアモーダル記号の観点2に挑戦する証拠です。代わりに、マルチモーダル情報の統合によって概念表現が構成されるという観点を支持します。この観点では、記憶検索によって意味ネットワークに分散された神経集団が活性化され、文脈次第で下位のモダリティー固有の神経集団も活性化できます。領域ごとの経験的情報の相対的寄与は、更なる調査が必要です。